美保関巡り。神社と末社を辿り青石畳を歩く。灯台見物のあとは絶品イカ焼き。
ひさしぶりに、松江市にある美保関に出かけてみました。
この日の朝、起きると外は雨模様。
傘をさしての参拝になるかと思いきや、美保関につく頃には日差しも暑いくらいの快晴になっていました。
美保神社
ここ美保関にある美保神社は、事代主様を祀った「えびす社」の総本宮なのだそうです。
出雲にある出雲大社だけ参ったのでは片参り、ここ美保神社に来てようやく両方参ったことになると、よく云われているようです。
そういえば、出雲大社の「大黒さま」と美保の「恵比寿さま」の二柱の木彫りの置物や面が対となって神棚に祀られているのを、よく見かけます。どちらも、たくさんの人に愛され大切にされてきた、福の神さまです。
神社は海を目の前に臨んだ、少し高台の位置にあります。内湾からの潮風が穏やかに吹き抜ける、いつ来ても気持ちのいい場所です。
海の近くだけあって、諸手船神事や青柴垣神事など船を使った神事が毎年行われています。音楽の神様も祀られていて、著名な音楽家による奉納演奏も行われるようです。
青石で出来た、大きい目をした狛犬がいました。
青石畳通り
美保関でもう一つ有名なのが、神社参道脇から続くこの『青石畳通り』
朝に雨が降っていたので、青石が美しく濡れていました。
家々の路地や隙間から、海が見えました。
旅館や資料館お酒やさんなど、屋号が付いた家々が並びます。所々に、木の板や石碑に美保関について著名人の詠んだ詩が記されていたので、読みながら歩きました。
夜はまた雰囲気が変わります。
青石畳の両脇には灯籠が並び、幻想的な雰囲気の中で夜の散策が楽しめます。
まるで映画”千と千尋の神隠し”の世界に迷い込んだようでした。
必見!レトロ建築”美保館”
美しい青石畳通りの中で、ひときわ情緒溢れる建物があります。
老舗割烹旅館 ”美保館 本館”です。
明治41年に竣工ののち、2004年には国の登録有形文化財にも登録されている建物です。
本館は、屋内の中に更にまた別の建物があるような不思議な作りになっており、その魅力に惹かれ皇族をはじめ数々の文化人・著名人も訪れているそうです。
夜にはJAZZの流れるオシャレなBAR🍸が開店し、昼間とはまた違った、しっとりとした美保館の雰囲気が楽しめます。
懐かしい黒電話もありました。
一般の方の見学は有料です。大人400円 小人200円(税込み)
美保関の末社めぐり
この美保関の周辺には、地元の方に大切にされてきた末社がいくつかあるようです。せっかくなので、散歩がてら周ってみることにしました。
市恵美須社
青石畳通りを歩いた終わりにある、小さな神社”市恵美須社”。台座も青石で造られていました。
地主社
青石畳を通って、まっすぐ路地を進み、突き当りを左に曲がるとありました。ピカピカで、遷宮を終えたばかりの神社でした。恵比寿様と女神様が祀られています。
幸魂神社
そして、その地主社の更に奥へ行くと、階段を登った先にひっそりと…
幸魂神社がありました。大国主様の幸魂が祀られているそうです。
客人社・天王社・糺社
そして来た道を海の方に戻り、山に続く階段をひたすら登り続けると、大国主を祀った客人社と三穂津姫命様を祀った天王社がありました。
山上にあるので、散歩のつもりが軽い登山のようでした。階段にへとへとになってしまって、写真を撮り忘れました…。
文化交流館近くにある糺社で、猫と遭遇。港町だけによく会います。
和田津見(海神)社・筑紫社
船を見守る場所に、弁天さんがありました。和田津見(海神)社・筑紫社で豊穣の神々が祀られています。港を守る常夜燈も建てられています。
天神社
車で向かったのは、少し離れたところにある天神社。少名彦様が祀られています。
地の御前と沖之御前
美保関灯台裏にある、海を臨む鳥居がある変わった神社です。その先にある、”地の御前”と”沖之御前”という島が祀られています。
この島で、恵比寿さまが釣りを楽しまれていたという言い伝えが残されています。
美保神社でも、この島から神様を迎える神事が行われるそうです。
御穂社
関の五本松公園から、美保関灯台へのハイキングコースにある”御穂社”
五本松公園の脇から、雰囲気のある鉄製の鳥居をくぐって向かいます。
階段を降りた後も、しばらく木々に囲まれた鳥居が立ち並ぶ、神秘的な光景の参道を進みます。
後ろ側から周ってくる形で、御穂社に到着しました。
出雲大社のオオクニヌシさまに縁のある神様が祀られています。山の上から美保関を見守っていらっしゃいました。
関の五本松公園
美保神社から少し離れ、コンクリートで舗装された山道のハイキングコースを登ると、30分ほどで”五本松公園”に着きます。
美保湾を見下ろす、標高150mの五本松公園。
その昔、船で美保関を目指す人々は山上にある五本の松をみて、到着の無事を喜んでいました。
ところが、殿様が通行と眺望の邪魔になるという理由で、山上にある五本松のうちの1本を切り倒してしまいました。
それを惜しんだ町の人々が、二度と残りの松を切られぬことを願い、民謡にして唄い思い留まらせました。
『関の五本松 一本伐りゃ四本 あとは伐られぬ 夫婦松』
多くの人に愛されたその松も、戦後の台風や松喰い虫被害に相次いで襲われ、倒木していきました。
現在は、五本松のある美保関の情景を今に取り戻そうと、植樹活動がされています。
美保関公園リフト跡
関の五本松公園に向かう途中のハイキングコースに、レトロなリフト乗り場がありました。
平成19年4月に休業されているため、現在は乗ることができません。
昔は頂上付近までリフトに乗り、美保湾の眺望が楽しめたようです。
ハイキングコース上は時折、リフト運行当時の賑わいが偲ばれる建造物が点在していました。
美保関灯台
美保神社から更に先へ車を走らせると、”世界の歴史的灯台100選”にも数えられる”美保関灯台”があります。
美保関の灯台はレトロでとてもかわいくて、童話の挿絵にでも描かれていそうな灯台です。
てっぺんの風見も可愛らしくて、素敵でした。
この日は定休日でしたが、同じ敷地にあるお洒落なレストランで、海を見ながら食事も楽しめます。
灯台近くに日時計がありました。こうして昔は時間を見たのでしょうか。スマホの時計をみると、案外正確で驚きました。
灯台裏の小道に入ると、展望デッキもありました。晴れた日には隠岐の島が見れるようです。この日はあいにく天気が悪く、遠くまではよく見えなかったので、大型の客船が通るのをのんびり見ていました。
絶品イカ尽くし
美保関といえば、なんと言ってもイカ焼きです。
灯台から美保神社の門前にまで戻り、イカ焼きを食べられるお店を探すと…どこもかしこも定休日…。
唯一空いていた門前のお店に入り訳を聞くと、私達が行った”木曜日”は定休日にしている店がほとんど、とのことでした。
それでも、せっかく美保関で何か海のものを食べたい私達は、その店でイカ焼きを食べることになりました。
まず「どうぞ」と当たり前のように出されたのは、お茶ではなく”めかぶ茶”。淡い塩味とじんわり広がる磯の香りに、心ほぐれました。
そして少し待って出てきたのは、イカ焼きだけでなく、イカのワタ。
ワタは甘辛く煮てあったのですが、ほっくりじんわり味が馴染んで旨味が凝縮してました。
「これつけてみる?」と出されたのは、自家製の塩辛。
イカにイカをつけてたべるのだから、相性ぴったり! 丁度いい塩味と甘みとコクが絶品でした。横に置いてあったマヨネーズはそっちのけで、塩辛ばかりつけて食べていました。
塩辛は臭みが強くて苦手だったのですが、これは全然臭みがない。不思議に思って聞いてみると、採れたてほやほやの新鮮なイカを使って作るそう。
すると臭みもなく、いつまでも甘みが残るのだそうです。海の近くだからできるのだと、教えてもらいました。
日御碕もおすすめします
この記事では美保関を紹介しました。美保関灯台は歴史と趣きのある石造り灯台ですが、おなじ出雲地域には「日御碕灯台」という日本一の高さを誇る灯台があります。
日御碕灯台は出雲大社の近隣にあります。昔は、出雲大社にだけ参拝することを「片参り」といったそうです。出雲大社は大黒社、美保神社はえびす社と、両方の神様にお参りしてようやく両参りとされたのだとか。
美保をおとずれたなら、ぜひ日御碕も訪れてみてください。