一畑薬師で心の目を開こう
歴史ある『目』のお薬師様
一畑薬師は、出雲市の一畑山頂にある臨済宗一畑薬師教団の総本山です。
正式な名前は「一畑寺」ですが、地元では一畑のお薬師様という意味で「一畑薬師様」という通称で呼ばれています。
この地域はかつて薬の栽培が盛んだったため薬草畑が多くあり、今でも字に畑の字を持つ地名が残っています。「一畑」も「一番目の薬草畑」という意味なんですよ。
一畑薬師の御本尊は、一畑山の麓の漁師が海から引き上げたとされる薬師如来です。
薬師如来はそもそも万病を治癒し心身の健康を守ってくださる仏様ですが、その漁師の母親の眼病が治癒したことから、一畑薬師は特に目のお薬師様として信仰されています。目からの繋がりで、「何かに開眼する」とか「ご縁の目を開く」といったご利益もあるようですね。
また、戦国時代には幼い子供が多く助かったことから、子供の無事成長の仏様としても親しまれています。
本堂までの道のり
駐車場から本堂へ向かう細い参道沿いには、苔むした石灯籠がずらりと百八基並んでいます。
日中でも趣があり十分に見応えのある景色ですが、大晦日や秋のもみじ祭り期間の夜などはこの石灯籠に火が灯され、浮世離れした素敵な雰囲気になるんです。
秋のもみじ祭りの際には、一畑薬師商店街が主催する灯めぐりというイベントも行われます。参加者は列になって順に祈念された炎を灯籠に灯していき、穢れを浄化する炎に祈願します。
なかなか体験できることではないので、興味のある方は秋頃に詳細を確認してみてください。
本堂に至るまでの道のりで是非チェックして欲しいのは、合計七体の目玉おやじ像です。
鬼太郎で有名な水木しげる氏は鳥取県境港市育ちで、直接出雲地方と関係がある訳ではありません。しかし、少年時代の水木しげる氏にお化けや妖怪の話を語り聞かせた「のんのんばあ」は熱心な一畑薬師の信者だったそうです。水木しげる氏が四歳の時には、一緒に一畑薬師にお参りをしており、『のんのんばあとオレ』にはその際のエピソードも登場しています。
一畑薬師が目のお薬師さんということもあり、当時の水木しげる少年とのんのんばあのお参りの道筋を示すように、様々なポーズの目玉おやじのブロンズ像が参道や石段沿いに建立されているんですね。
本堂前では、水木しげる少年とのんのんばあのブロンズ像が出迎えてくれます。
ブロンズ像には、参拝者へ向けた様々な言葉も台座に彫られていますので、併せて眺めると面白いですよ。
本堂周辺の必見ポイント
本堂は、薬師如来が祀られている薬師堂と、一般参拝者が参拝できる礼拝堂の二つに分かれています。
残念ながら薬師如来は秘仏となっているため、通常はお顔を拝むことはできません。
薬師如来は左手に薬壺を持っており、その中には体や心の病を治してくれる霊薬が入っているそうです。目のお薬師様ですので眼病は勿論のこと、「家内安全」「厄除」などのご利益も頂けます。
子供の無事成長の仏様でもありますので、お子さんとお参りするのも良いですね。
「め」「医」と描かれた独特の絵馬も、こちらで奉納することができます。
また、八万四千仏堂も非常に壮観です。
仏教では八万四千の教えが説かれていることから、同じく八万四千体の仏像を安置しようと1993年からスタートした計画で、2020年現在も仏像の奉納主を募集中です。
ずらりと安置された仏像を眺めていると、このひとつひとつに誰かの願いが込められているという事実に、深い感慨を覚えてしまいますね。
境内の薬草畑でとれたお茶を清水で沸かしご祈祷したお茶湯も、忘れずに頂きたいところです。
このお茶湯をまぶたに塗ると、眼病に効くと言われています。
トックリも用意されており、代金を納めればお茶を持ち帰ることもできますよ。
小泉八雲も十代の時に目に怪我を負ったことがあるため、参拝の際にこのお茶湯を持ち帰ったそうです。
帰り道のお楽しみ
一畑薬師は標高200mの一畑山頂にあるため、晴れていると境内から穴道湖や大山などの山並みが拝めます。
お参りを済ませた後は、山を降りる前に出雲神話の舞台を一望してみてはいかがでしょうか。
駐車場と百八基灯籠の間にある商店街では、甘酒やおまんじゅう、出雲そばなどが売られています。
店内で温かいお茶と共に頂くと、石段を登った疲れが癒されるようです。
このおまんじゅうは左から酒、紫芋、きなこ味でした。
普段あまり仏教に馴染みのない方でも、改めて立ち寄ってみると厳かな気持ちになるものです。
歴史的なことや言い伝え、仏像にまつわる事柄などを知ることもでき興味深いです。
一畑薬師は座禅体験や写経体験、法話などの体験もできますので、興味のある方は公式サイトを確認してみてください。いずれも予約が必要です。週末座禅や朝がゆ座禅などの会もありますよ。
ご祈念は都度行われています。
また秋の一畑薬師マラソン大会では、古参道である1300段の石段を駆け上がる場面が見どころの一つとなっています。
アクセスについて
車で来られる場合は、道沿いに大きな看板があり、一畑山の麓からは一本道です。
一畑薬師にはとても大きな駐車場(無料)が備えられているので安心です。
この機会にバタデンの愛称で親しまれているローカル線・一畑電車を利用するのも良いですね。
その場合、最寄の「一畑口」駅で降り、タクシーかバスを利用することになります。
いずれも公式サイトで詳細をご確認ください。